2015年10月17日土曜日

アンドレイ・タルコフスキー監督映画『惑星ソラリス』の感想メモ

惑星ソラリス Blu-ray 惑星ソラリス HDマスター [DVD]
惑星ソラリス Blu-ray
『惑星ソラリス』
Солярис
監督:アンドレイ・タルコフスキー
脚本:アンドレイ・タルコフスキー、フリードリッヒ・ガレンシュテイン
音楽:エドゥアルド・アルテミエフ
撮影:ワジーム・ユーソフ
1972年公開 ソビエト連邦 ( 日本は1977年4月29日公開 )
原作:スタニスラフ・レム「ソラリスの陽のもとに」
【キャスト】
ハリー:ナタリア・ボンダルチュク
クリス・ケルヴィン (心理学者):ドナタス・バニオニス
アンリ・バートン (宇宙飛行士):ウラジスラフ・ドヴォルジェツキー
サルトリウス (天体生物学者):アナトーリー・ソロニーツィン
ギバリャン (物理学者):ソス・サルキシャン
スナウト (サイバネティックス学者):ユーリー・ヤルヴェト
ニック・ケルヴィン (クリスの父):ニコライ・グリニコ
アンナ (クリスの伯母):タマーラ・オゴロドニコヴァ
ギバリャンの客:オーリガ・キズィローヴァ
惑星ソラリス - Wikipedia
1972年カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞。1978年、第9回星雲賞映画演劇部門賞受賞。
※ネタバレします
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この映画、凄く面白かったです。
こういう芸術的で難解な?作品が私は大好きなのです・・・
観ていて妙に心が落ち着きます。

音楽がとても良かった(オープニングや昔の家族フィルム:雪山焚き火のシーン、無重力浮遊のシーンでかかっていた曲=ヨハン・ゼバスティアン・バッハ BWV639がとても素晴らしかったです・・・聞いていると心が神聖な気持ちになってきます・・・)


前半、地球でのシーン・・・
クリスの実家、自然に恵まれた池のある庭・・・
水の流れに踊る水草・・・馬・・・謎の少女のあいさつ・・・突然の雨(晴れてるのに雨)・・・バートンのソラリス報告(白黒の過去映像)・・・
主人公クリスの陰鬱な雰囲気(メンヘラとはちょっと違う)がなんとも心地良いと思いました。

ただ、この前半部分は→あまりに地味な展開だったため、どう理解したらよいのかよくわからなくて、ちょっと退屈な印象もありました・・・後から振り返ってみると、この前半部分にこそ味わい深さがあって、この作品に奥行きを与えているのだなぁとそう思えるのですが・・・


映画の冒頭・・・
最初の最初にクリスが登場するシーン→その手に持っていた銀色の箱・・・あれは一体何を意味しているのだろうか?
弁当箱にしか見えないのですが・・・
あれは弁当箱であってるのか?
あの銀の箱の中に地球の土と植物の種を入れてソラリスへ持って行った?
映画の終盤、その銀の箱に入った土から植物が芽を出している・・・
★まさかソラリスはこの土(微生物入り)と植物の芽の思考を読み取って、ラストの(クリスの実家)を完成させたのか?


バートンのソラリス報告(過去のVTR、白黒映像・・・)
映像内、若かりし頃のバートンは禿げていない・・・
しかし年老いたバートンは禿げている・・・
どっちが本当の姿なのか・・・?
たぶん本当の姿は禿げていなくて・・・ハゲヅラをかぶっているのかな?しらんけど・・・)


車載シーン←このシーンが結構長い・・・
お洒落でアートな外国の町並み&道路・・・と思っていたら撮影現場はなんと日本らしい。
日本の首都高が使われている・・・
よく見ると、おもいっきり日本語で標識や看板が書かれてある・・・

この車載シーンがなんともカコイイ・・・
日本=当時の近未来都市の風景←非常にセンスを感じます。

車載シーンのバックでかかっている音楽がちょっと面白い・・・
(当時の)アバンギャルドな未来的なイメージの音楽(効果音)なんだろうか?・・・

★この車載シーンを見て私が思ったこと・・・↓
地球の表面にはりめぐらされた道路の中を無数の車(中に人がいる)が行き交う・・・↓
その様子がイメージとして↓
脳内の大脳新皮質=ここにある約150億個もの神経細胞とニューロン(神経回路)を繋げているシナプス(神経伝達)が形成する複雑で巨大なネットワーク・・・←これとイメージを重ね合わせているのではないかと・・・これを意図、表現しているのだと思いました・・・

車載シーンは最初白黒だったのに、ある時からカラーへ変わったり、白黒にまた戻ったりする・・・これは一体どういうことだろうか?

車載シーン以後も、急に白黒になったりカラーになったりしてるシーンがある・・・
う~ん、意図がちょっとわからない・・・


ソラリス・ステーションの内装がとても良い・・・
(85人乗りのステーション)
こういう間取りの家に住んでみたい・・・
ソラリス・ステーションの荒れ果てた感じがとても良い・・・
一体何があって通路の真ん中に冷蔵庫みたいなのがドーンと斜めに置いてあるのか?


ソラリスの海面のうねり(映像)が不気味すぎる・・・
どこの海でどうやって撮影したのだろうか?やはり北極海?


『ソラリスの海は我々の頭脳から記憶の一部を選び物質化する・・・』
『「お客」はニュートリノから成っている
ニュートリノは不安定のはずだがソラリスの磁場が安定させるらしい』
『海が我々の睡眠中の思考を
物質化するというなら我々の意思を海に伝えてみては?』

頭の中で考えたことが物質化できるなんて
なんて素晴らしい場所なんだ!と(最初)ちょっと思ってしまいました・・・
※なぜか私の脳裏に一瞬ガッキーの姿が浮かぶ・・・
新垣結衣 写真集『yui aragaki ファッションフォトマガジン』

こういう場所(ソラリス)へは、蓄積情報量の少ない若い人や子供ではなく、ある程度年をとった人が行くべきなんだろうなぁと思いました・・・
うまくいけば、乱雑に置き去りにされた過去の記憶(思い出)の再構築、人生のリフォームができるかもしれない・・・

ただ・・・物質化したハリーの苦悩する姿(液体酸素を飲んで自殺をはかるメンヘラ・病みっぷり)を見てるとなかなか思った通りにはいかないのかも・・・
トラウマと再格闘するのは非常に辛い・・・

あと、ソラリスの物質化の仕事も→若干いい加減なような気がします・・・
神はいい加減というか・・・
苫米地英人の「脳はいいかげん、超手抜き」という言葉がふと思い浮かびました・・・


父が撮った家族フィルム:雪山映像シーン
クリスの母親の姿が尋常じゃなく美しい・・・まるで絵画みたい・・・
バックでかかっている曲=ヨハン・ゼバスティアン・バッハ BWV639・・・が見事に映像にマッチしている・・・牧歌的かつ神聖で哀愁のある音楽・・・たまりません・・・


スナウトの誕生会。ソラリスの図書館でのシーン。
ハリーの苦悩する表情・姿が秀逸(すばらしい)・・・
「でも私は・・・人間になります・・・感情だってあなた方に劣りません」
ソラリスの創作物であるハリーに、はたして人間的な意思・感情はあるのか?
自分が一体何者であるのか・・・人間とは何か?
苦悩するハリー・・・
「私は・・・彼を愛しています・・・私は人間です」


ブリューゲルの「雪中の狩人」
雪中の狩人 - Wikipedia
ブリューゲル・「雪中の狩人」 プリキャンバス複製画・ 【ポスター仕上げ】(6号相当サイズ)
ブリューゲル・「雪中の狩人」 プリキャンバス複製画・ 【ポスター仕上げ】(6号相当サイズ)
ブリューゲルの絵を眺めながら
ハリーはクールに無表情でタバコを吸っている・・・(←先ほどの苦悩する姿とのギャップに若干恐怖を覚える

煙草を吸うという行為があまりに唐突で妙な違和感を覚える・・・
そういえば、雪山で煙草を吸っているクリスの母親の美しいシーンがあった・・・
ブリューゲルの「雪中の狩人」の風景ともかぶる・・・

ソラリスが創造したハリーの中にクリスの母親のイメージ(情報)が加わり始めているのか?

ブリューゲルの「雪中の狩人」の画が画面いっぱいに写されている時にバックで流れている音楽がすごく不気味でこわい・・・

★「今夜17時」ステーションは30秒間無重力状態になる」
ソラリスの図書館での無重力浮遊シーンが美しい・・・
圧倒的な映像センス
このシーンは観ていて鳥肌が立ちました・・・
バックで流れる音楽バッハが本当に素晴らしい・・・
液体酸素 - Wikipedia


クリスの部屋に『新しい客』若かりし頃の母親が現れる・・・
そして犬も・・・
さらにハリーが複数人(4、5人いる?)に増えている?
まさに混沌。
次の瞬間→これは夢のシーンだろうか?急に白黒映像へ切り替わる・・・(実際のクリスは寝ている?)
若かりし頃の母親と抱擁するクリス・・・場所は地球の実家らしい・・・
クリスは母親に腕の汚れを(水で)落としてもらう・・・

次のシーン・・・
クリスがステーション内のベッドで目を覚ますとそこにはスナウトが・・・
「ハリーはもういない」
スナウトからハリーが書いたという手紙を受け取る。
ハリーからのメッセージ「クリス あなたをだますのは苦しいけど、ほかに方法がないのです」
「これが最善なんです・・・私から頼みました・・・誰も恨まないでください ハリー」
「消滅だよ・・・光を風に触発させた」

ハリーは消えてしまった・・・
これはトラウマの解消(罪の浄化)を意味するのだろうか?

シーシュポスの神話 - Wikipedia

「関心が問題を生むのさ」
「真実のためには謎の方が都合がいい・・・幸福の謎 死の謎 愛の謎・・・」
哲学的な話をスナウトとしているときに映る↓
クリスの耳のアップがすごく気になりました・・・なんで耳のアップなんだ?
耳毛もっさり・・・


せっかく宇宙に来ても、だらしない荒廃した場所で自分の内面、自身の過去の罪・幻影に悩まされる日々・・・なんなんだろうかこれは一体・・・


ラストシーン
地球に戻ったのかと思ったらソラリスの島の中だった?
背筋がゾッとしました。すごく怖いんですが・・・(流れている音楽も暗くてこわい)

我々が生きるこの臨場空間も
我々の脳内信号を読み取ったソラリスがみせる幻覚のひとつなのかもしれない・・・

いい加減なソラリス製の地球は間違って部屋の中に雨を降らせた?
雨っていうか酸の液体がボタボタ落ちてきているような・・・
父親の背中(衣類)から煙のようなものが出ている・・・とけるんじゃないのか?

≪様々な解釈ができるような終わり方だったと思います≫

このラストシーンは本当に秀逸だと思いました・・・
1972年に公開←当時としては相当斬新だったのではないか?

やっとハリーとのトラウマ(罪の意識みたいなもの)が救済されたと思ったら今度は父親とのトラウマが再発動する?・・・最後ひざまついて父親にすがるクリスの姿が印象的でした・・・

※結局クリスは地球へ帰らず、ソラリス・ステーション内に残ったのだろうか?
鏡はそこに居ないと何も写さないわけだし・・・ソラリスがクリスの思考を受け取ったからこそ現れた島(実家)なのだろうし・・・


普通こういう難解な作品を創ろうとすると、とたんに陳腐になって
しまうような気がするのですが、そういう感じが全くしませんでした。
本当にスキがないスペシャリストの仕事を見せられたような気がしました・・・
芸術的で不気味な素晴らしい映像の数々・・・
(所々つっこめるところもあるユーモラスな演出・・・)
登場する役者の演技がみんな神がかっていました・・・うますぎる・・・
久しぶりに名作と出会ったなぁと・・・そう感じました。